36「ネブカデネザル王の第二の夢」

 「われネブカデネザルはわが家に安らかにおり、わが宮にあって栄えていたが、わたしは一つの夢を見て、そのために恐れた。すなわち床にあって、その事を思いめぐらし、わが脳中の幻のために心を悩ました。そこでわたしは命令を下し、バビロンの知者をことごとくわが前に召し寄せて、その夢の解き明かしを示させようとした。すると、博士、法術士、カルデヤびと、占い師たちがきたので、わたしはその夢を彼らに語ったが、彼らはその解き明かしを示すことができなかった。最後にダニエルがわたしの前にきた、—彼の名はわが神の名にちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼のうちには聖なる神の霊がやどっていた—わたしは彼にその夢を語って言った、『博士の長ベルテシャザルよ、わたしは知っている。聖なる神の霊があなたのうちにやどっているから、どんな秘密もあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見た夢がある。その解き明かしをわたしに告げなさい。わたしが床にあって見た脳中の幻はこれである。わたしが見たのに、地の中央に一本の木があって、そのたけが高かったが、その木は成長して強くなり、天に達するほどの高さになって、地の果までも見えわたり、その葉は美しく、その実は豊かで、すべての者がその中から食物を獲、また野の獣はその陰にやどり、空の鳥はその枝にすみ、すべての肉なる者はこれによって養われた。わたしが床にあって見た脳中の幻の中に、ひとりの警護者、ひとりの聖者の天から下るのを見たが、彼は声高く呼ばわって、こう言った、『この木を切り倒し、その枝を切りはらい、その葉をゆり落し、その実を打ち散らし、獣をその下から逃げ去らせ、鳥をその枝から飛び去らせよ。ただしその根の切り株を地に残し、それに鉄と青銅のなわをかけて、野の若草の中におき、天からくだる露にぬれさせ、また地の草の中で、獣と共にその分にあずからせよ。またその心は変って人間の心のようでなく、獣の心が与えられて、七つの時を過ごさせよ。この宣言は警護者たちの命令によるもの、この決定は聖者たちの言葉によるもので、いと高き者が、人間の国を治めて、自分の意のままにこれを人に与え、また人のうちの最も卑しい者を、その上に立てられるという事を、すべての者に知らせるためである』と。われネブカデネザル王はこの夢を見た。ベルテシャザルよ、あなたはその解き明かしをわたしに告げなさい。わが国の知者たちは、いずれもその解き明かしを、わたしに示すことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖なる神の霊がやどっているからだ。』」ダニエル書4:4〜18

 ここに叙述されている事件の中、重要な部分にのみ注意を促すこととしよう。
 第一、ネブカデネザルはその宮殿において安泰であった。彼は全ての事業に成功して、シリア、フェニキヤ、ユダヤ、エジプトおよびアラビヤを征服した。彼をこのように傲慢にさせたものはおそらくこれらの大征服であったであろう。しかし彼が最も平和であると考えた時、すなわちそのような事件が起こるとは思われない彼の得意の絶頂に達したその時にあって、神は彼に恐怖の念を与えられたのであった。
 第二、ネブカデネザルのごとき王がどうして恐怖の念に襲われたのであろうか?彼は青年時代から軍人であって、しばしば屍山血河を超え、強敵と相対峙した時でも決して顔色を蒼白にしたりあるいは戦慄したりした事はなかった。それなのに今や何が彼を恐れさせたのであろうか。敵の包囲攻撃を受けているのでもない。戦雲がみなぎっているのでもない。すなわち彼が恐怖の念におそわれる何の理由のない時であるがゆえに、神はそれをなす為に思いもよらない夢を選ばれたのである。他人を恐怖に陥れ、誰にも恐怖を感じなかった彼は、自ら恐怖を抱くようになった。これこそ神の選ばれた方法なのである。
 第三、魔術師等が彼等の仮面をはがれた事はすでに記録されているが、ここに彼等がよりその欺瞞を暴露したことが記されている。すなわち彼等は夢さえ示されるならば、その解き明かしを申し上げますと豪語した。幸い第二章に記録されている事件の時には、ネブカデネザル王は夢を覚えていなかったからよかったが、今度は明らかに王は記録していたので、彼等は解き明かしが出来るはずであるのもかかわらず、それが出来ないで、再び神の預言者を煩わした。
 第四、ネブカデネザルの治世の驚くべき状態が地の只中にある一本の木によって象徴されている。すなわちネブカデネザルの統治したバビロンは、ほとんどその当時しられていた世界の中心であった。木は天にまで達し、かつその葉は美しくその外観の栄光は実に偉大なものであった。しかし多くの国々のようにそれが全部ではなかった。その内部にもまた多くの美点があった。すなわちその実は豊かで、一切の者がその中より食を得、また野の獣はその陰に臥し、空の鳥はその枝に住み、全て肉なる者はこれによってその身を養った。ネブカデネザルの政治の許に国民が完全に保護され、かつバビロンが非常に繁栄した事実をこれ以上明瞭に力強く象徴することは出来ないであろう。・・・第五に続く。

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