37「王に対する警告の使命」

  「その時、その名をベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚き、思い悩んだので、王は彼に告げて言った、『ベルテシャザルよ、あなたはこの夢と、その解き明かしのために、悩むには及ばない。』ベルテシャザルは答えて言った、『わが主よ、どうか、この夢は、あなたを憎む者にかかわるように。この解き明かしは、あなたの敵に臨むように。あなたが見られた木、すなわちその成長して強くなり、天に達するほどの高さになって、地の果までも見えわたり、その葉は美しく、その実は豊かで、すべての者がその中から食物を獲、また野の獣がその陰にやどり、空の鳥がその枝に住んだ木、王よ、それはすなわちあなたです。あなたは成長して強くなり、天に達するほどに大きくなり、あなたの主権は地の果にまで及びました。ところが、王はひとりの警護者、ひとりの聖者が、天から下って、こう言うのを見られました、「この木を切り倒して、これを滅ぼせ。ただしその根の切り株を地に残し、それに鉄と青銅のなわをかけて、野の若草の中におき、天からくだる露にぬれさせ、また野の獣と共にその分にあずからせて、七つの時を過ごさせよ」と。王よ、その解き明かしはこうです。すなわちこれはいと高き者の命令であって、わが主なる王に臨まんとするものです。すなわちあなたは追われて世の人を離れ、野の獣と共におり、牛のように草を食い、天からくだる露にぬれるでしょう。こうして七つの時が過ぎて、ついにあなたは、いと高き者が人間の国を治めて、自分の意のままに、これを人に与えられることを知るに至るでしょう。また彼らはその木の根の切り株を残しおけと命じたので、あなたが、天はまことの支配者であるということを知った後、あなたの国はあなたに確保されるでしょう。それゆえ王よ、あなたはわたしの勧告をいれ、義を行って罪を離れ、しえたげられる者をあわれんで、不義を離れなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄が、長く続くかもしれません。』」ダニエル書4:19〜27

 ダニエルがしばらくの間、驚き躊躇していたのは、夢を解き明かすことが出来なかったからではなく、それは王に語り難い事であったからである。ダニエルは王の恩寵を受けていたし、我々の知り得る範囲において彼は王より厚遇のみを受けていた。であるからこの夢で示されたような刑罰が彼に来る事を知らせるのは情においても忍びなかったのである。彼はなんといって知らせるのが一番良いか判断に苦しんでいたのである。ここで王は何か悪い事が起きることを予想したようで「あなたはこの夢と、その解き明かしのために、悩むには及ばない」とあたかも自分に対してどんな関係があっても躊躇しないようにと言ったようである。このような保証を与えられた時、初めてダニエルは口を開いた。このような用意周到な言葉がまたとあるであろうか。「わが主よ、どうか、この夢は、あなたを憎む者にかかわるように。この解き明かしは、あなたの敵に臨むように」と。結局この夢に示されている不幸が王に来ないで、王の敵に来ることを望むと言ったのである。
 ダニエルはその夢が王に関していることを伝えるや否や、王はすでにその夢を仔細に陳述した事が自身の運命を宣告したのである事を明らかに知った。ここに記してある解き明かしは明瞭であるから説明を必要としないと思う。この刑罰は一定の条件のもとで避けることが出来るはずのもので、それらは王に、天が治めていることを教えた。すなわちここで天というのは天をつかさどる神を意味するのである。であるからダニエルはこの機会を利用して来たらんとする刑罰を逃れるために王を諌めた。しかし彼は荒々しく罪を責めて王を罵倒しなかった。彼は「それゆえ王よ、あなたはわたしの勧告をいれ・・・」と慇懃(いんぎん)に勧めた。使徒パウロも人々に、「どうかわたしの勧めの言葉を受けいれてほしい」(ヘブル13:22)と言っている。もし王が義を行い、罪を離れ、貧者を憐れんで悪を離れるならば、あなたの平安はあるいは長く続くでしょう、英訳聖書傍注によれば「あなたの過ちは癒される」と言われている。彼がこれらの諌めに服するならば、この時においてさえ来ようとする神の刑罰を避けることができたのである。

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