81「三度ローマについて」

 「彼らの国の終りの時になり、罪びとの罪が満ちるに及んで、ひとりの王が起るでしょう。その顔は猛悪で、彼はなぞを解き、その勢力は盛んであって、恐ろしい破壊をなし、そのなすところ成功して、有力な人々と、聖徒である民を滅ぼすでしょう。彼は悪知恵をもって、偽りをその手におこない遂げ、みずから心に高ぶり、不意に多くの人を打ち滅ぼし、また君の君たる者に敵するでしょう。しかし、ついに彼は人手によらずに滅ぼされるでしょう。」ダニエル8:23−25

 雄山羊の角が折れて四つの角の末期に起きたこの国は第九節に記された小さい角であって、それは同節において説明したようにローマにあてはめるならばぴったりと合うのである。「ひとりの王が起るでしょう。その顔は猛悪で」とあるが、モーセユダヤ人がローマから受ける刑罰を預言して、ローマの事を「顔の恐ろしい民」といっている(申命記28:49,50参照)。ローマ人のように好戦国民らしい怖しい顔をしていた国民はいない。「巧みに偽りを言い」(彼はなぞを解き)とは、ローマが他国に対して巧みに謀略をめぐらしたことを言うのである。実際ローマの外交は極めて利己的で野心満々とした暴君的政策であった。
 「罪びとの罪が満ちるに及んで」とは各時代を通じて神の民と圧制者との関係をいったものである。すなわちユダヤ国民が捕虜の身となったのは彼らの罪の為であった。そして彼らが罪を重ねる度毎に、より厳しい刑罰にあったのである。ユダヤ国民がローマの属国であった時ほど道徳的に堕落していた時代はないのである。
 「その勢力は盛んである。しかし自分の能力によってこれをなすのではなく」(その勢力は盛んであって・・・)。すなわちローマの成功は大部分同盟国の助力と敵国内に紛争を起こすことによって、それを巧みに利用したものである。法王ローマもまた彼が霊的に操縦した国々によって権力をふるったのである。
 「その破壊は著しく」(恐ろしい破壊をなし、)。キリストは預言者エゼキエルを通して、ユダヤ人を「滅ぼすことに巧みな者の手に」渡すと言われた。そしてエルサレムの滅亡に際して百十万人のユダヤ人がローマ軍のために殺害されたのはこの驚くべき預言の確実な成就である。また法王教ローマは5千万人以上の殉教者をだした直接の責任者である。
 「志を得て、事をなし、力ある者と聖徒を滅ぼす」(そのなすところ成功して、有力な人々と、聖徒である民を滅ぼすでしょう)。すなわちローマは外交的政策をもって国々を統一した。この事においてローマは他の国々とは非常に異なっていたのである。これは多神教ローマとは非常に異なっていたのである。これは多神教ローマおよび法王教ローマのいづれにおいても事実であった。ゆえにローマは平和の時に多くの者を滅ぼしたといわれているのである。
 ローマの一人の王はイエスキリストに死刑の宣告を与えることによって君の君たる者に敵したのである。「しかし、ついに彼は人手によらずに滅ぼされるでしょう。」この表現は第二章の幻において第四の国が石に打たれて滅ぼされる状態の表現と全く同一である。


ダニエル失神して病む


 「『先に示された朝夕の幻は真実です。しかし、あなたはその幻を秘密にしておかなければならない。これは多くの日の後にかかわる事だから。』われダニエルは疲れはてて、数日の間病みわずらったが、後起きて、王の事務を執った。しかし、わたしはこの幻の事を思って驚いた。またこれを悟ることができなかった。」ダニエル8:26、27
 「朝夕の幻」とは2300の朝夕のことである。長期間にわたる圧制と神の民に来たる災難の光景を見て、ダニエルは失神して数日の間病み患った。彼は幻の事を思って大いに驚いたが、しかしそれを悟ることができなかった。なぜガブリエルは命じられたようにこの時幻をダニエルに全部悟らせなかったのであろうか。それはその時ダニエルがそれ以上聞くことができなかったからである。であるから幻の中説明されなかった部分は後日に譲られたのである。


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