116「エジプトとシリアの葛藤」

 
 「年を経て後、彼らは縁組をなし、南の王の娘が、北の王にきて、和親をはかります。しかしその女は、その腕の力を保つことができず、またその王も、その子も立つことができません。その女と、その従者と、その子およびその女を獲た者とは、わたされるでしょう。」ダニエル11:6

 エジプトとシリヤ両国間にはしばしば戦争があったが、エジプトの第二の王トレミー・フィラデルフオスとシリヤの第三の王アンチオカス・テオスとの戦争はことにはなはだしかった。であるからシリヤの王は后のラオデキとその二子を離別し、エジプトの王女ベレニケを入れて后となすとの条件のもとに両国はついに平和条約を締結した。この条約に基づきトレミーは王女ならびにあまたの礼物を携えてアンチオカスの所に行った。
 「その腕の力を保つことができず」とあるように、エジプトの王女とシリヤ王との結婚は全くかいなく、シリヤ王は以前の愛を捨てることができず、まもなく先妻ラオデキと二子を宮中に呼び返した。
 次に預言は「またその王も、その子も立つことができません」と言っている。ラオデキはこのように勢力を得たが、もし王の寵愛が衰えるようなことがあると再び追放され、ベレニケがまた戻らないかとの杞憂をいだき、むしろ王を殺して自分の地位の安定をはかるしかないと考え、ついに彼女は間もなく王を毒殺してしまった。そしてベレニケの生んだアンチオカスの王子もまたその後継者とはならなかった。なぜならばラオデキは策略をめぐらして自分の長子セレウクス・カリニカスを王位に継承させたからである。
 また「その女(ベレニケ)とは、わたされるでしょう。」すなわちラオデキは夫アンチオカスを毒殺しただけでは満足できず、ベレニケをも殺してしまった。「その従者」すなわちベレニケに従いエジプトから来た男女の従者と彼女を擁護しようとした者も大多数共に殺された。「その子」とは英訳聖書傍注には「彼女の生んだ者」とあるように、それはベレニケの子のことであるが、彼らもまたラオデキの命令によって母と共に同時に殺された。次に「その女を獲た者」との語については、ゼローム氏の説くようにベレニケの夫アンチオカスか彼女に加担した者をいったのであろう。
 このような恐ろしい悪事に対していつまでも刑罰がくだらないはずがない。それは次に陳述する預言と歴史的事実が明らかに証明している。
 
もしよろしかったら、クリックお願いいたします。

 ↓↓↓  

にほんブログ村 哲学・思想ブログ プロテスタントへ
にほんブログ村